フリーランスになったばかりの頃、私は“カタカナ語”に取り憑かれていた。
とにかく「言い回しがイケてる=仕事できる人」だと思っていたのである。
「このスキームでアジェンダ整理して、クライアントとミーティングしてコンセンサス取ってからリスケしよっか」
……何を言っているのか、実は自分でもよくわかっていない。
でも「言ってる感」だけはある。
カタカナ語って、意味がわからなくても口から出すだけで“キリッ”とした顔になれる。魔法か。
その頃の私の口ぐせは「コミットします!」と「マネタイズ狙っていきましょう!」
今思えば、なんでも“マネタイズ”すりゃいいと思っていた。
ハンバーグ作るにも「マネタイズの香りしますね」とか言いかねない勢いだった。
一番ヒドかったのは、「それってエビデンスあります?」って言って、
飼い犬に「は?」って顔された。
いや、今なら私も「は?」って言いたい。
最近は、ようやく日本語のよさを再認識している。
「次回の会議いつにします?」「じゃあここ、直しときますね」
うん、シンプル。伝わる。イキらない。平和。
でも、そんなイキり期の自分を思い出すと、ちょっと恥ずかしいけど、なんか愛おしい。
そして、ふと思い出す。
昔バイトしてたとこで、お客さんがこう言った。
「ウィッフィーできません」
ウィッフィー。
Wi-Fi(ワイファイ)を、ウィッフィー。
そのときは笑いをこらえるのに必死だったけど、今ならあの人の気持ちが痛いほどわかる。
“知ってる風”のフリって、案外みんなしてるもんだ。
私も“ウィッフィー”みたいなやさしさと勘違いでできてる人間です。




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